自宅研究員と英語

自宅研究員とは、自宅で研究活動を趣味として行う者を指します。成果を出すために論文を執筆するなどの工程が不要なので、一般的な研究職とは何かと異なる点があります。

ところで、研究者にとって英語力は必要不可欠だとよく聞きます。私が以前在籍していた研究室でも、進捗報告は日本語禁止でしたし、学会発表でも多くの場合は英語で行われます。

それでは、自宅研究員の場合は、英語力は必要なのでしょうか

本記事では、英語の文章(リーディング/ライティング)と音声(リスニング/スピーキング)に分けて、一般の研究職と自宅研究員の違いについて考察します。


前提


ここでは、私が経験した範囲内で研究者の英語事情を比較します。したがって、人文科学と社会科学の研究者や、企業の研究職は対象外とします


文章力


一般の研究職の場合

有期雇用の場合は、実績として原著論文数が考慮されるので、英語での論文執筆能力は確実に必要となるでしょう。また、論文査読の際に査読者とのメールでのやり取りがあるので、ここでも英語でメールを書く能力が必要となります。


そして、英語を書くには正しい英語の書き方を知る必要があります。そのための一番簡単な方法は、他の論文の英語を真似することです。多くの場合、論文を書く際には書きたいフレーズを既存の英語論文から探して書くことになるはずです。

したがって、必然的に論文を読む能力も必要となります。論文が読めなければ、似ているフレーズを探すのも困難になるからです。


まとめると、研究職を続けるには英語論文を書き続けなければならないので、論文を書く能力と参考論文を読む能力が必要となります


自宅研究員の場合

趣味で研究する分には論文執筆が不要なので、英語記事を書かない場合は英語力は不要です。しかし、当然ながら英語記事を書く場合は必須となります。しかも、論文を書くよりも高難易度である可能性が高いです

というのも、英語圏でのSEOを気にして記事を書く必要があるからです。どのキーワードを選択するかとか、どのように記事を構成するかを研究するのは、日本語でもレベルが高いです。

一方で、英語論文は書き方がある程度決まっており、参考にできる文章もたくさん公開されているので、比較的難易度が低い印象です。


まとめると、英語記事を書く場合は英語力が必ず必要になり、しかも超高難易度になる可能性があります


私の場合

私自身は、特に英語圏向けに記事を書く予定はありません。理由としては、英語ネイティブの人口はそれほど多くなく、英語で記事を書くことにそこまで魅力を感じないからです。

私の想定では、AIの発達により英語以外への翻訳も進歩していくはずなので、ひとまずはアカデミックライティングを意識して日本語の記事を書き溜めておき、いずれは翻訳AIで別言語記事に変換していくことを予定しています。


会話力


一般の研究職

国際学会に参加する場合、英語を聞いたり話したりする能力が必要となります。また、今時は国内学会でも英語で発表することが多くなっているため、学会発表を重視する研究室なら英会話はできた方が良いでしょう

しかし、学会不要論を提唱している層も存在するため、場合によっては学会に参加しなくてもよいかもしれません。


ただし、研究室に外国人スタッフがいる場合は事情が変わります。ほとんどの研究室では定期的に進捗報告や論文紹介などが開催されていますが、参加者に外国人がいると進捗発表が英語になる可能性が急増します

また、海外の研究室と共同研究することもあり得ます。その場合は、英語で会議をすることになります。


このように、研究室に在籍している限りは英語で会話する機会が多くなるため、英会話ができた方が肩身が狭い思いをしなくて済みそうです


自宅研究員の場合

基本的には一般の研究職と同様で、海外の研究員と積極的に関わるなら、英会話能力が必要となります。ただし、自分の行動指針が自分で決められる分、英会話を避けて活動することも可能です

例えば、YouTubeで英語講演を聞く場合は、英語の自動字幕を付けることでリスニング能力が無くてもある程度は英文が分かるようになります。あとは英語を読む能力があれば、講演内容を理解できるでしょう。

自分で講演する場合も、無理に英語で話さなくても、講演自体は日本語で話して、動画に英語字幕を付けるなどの策も取れます。


本職の研究者と違って英語が強制されることは無いため、上記の通り自分の英語力に合わせてどこまで頑張るかを決めることができます


私の場合

私はそもそも声出しするつもりが無いので、英語どころか日本語で会話する機会もこの先ないと思われます。なので、英語の勉強は文章力特化で進めていくことになりそうです。


まとめ


この記事では、英語の必要性について、一般的な研究職と自宅研究員の違いを考察しました。


研究職では英語が必須というのはよく聞きますが、私の経験からしても確かに英語力が問われる機会が多かった印象です。私は英語ができる方ではなかったので、かなり苦労した記憶があります。

一方、自宅研究員では上司に英語を強制されることが無いので、避けようと思えばいくらでも英語から逃げることができます。ただし、日本語圏外の人間には自分の発信が届かないので、英語を使わないと必然的に影響力が小さくなります。


いずれにしても、英語はできるに越した事はないため、既に英語力が高い人はぜひ活用した方が幸せになれるはずです。英語に自信が無い人は、これからのキャリアプランを考慮して、今後英語力を伸ばしていくべきかそれとも得意分野をさらに伸ばしていくのか、取捨選択するのが良いと思います。


以上です。